甘美な甘味、そして酸味
「ふぅ…たまには散歩も良いものね」
その日は書類が特別少なく、パトロールに出ていた
まぁ流石に風紀委員長直々に出ているとなれば、日頃好き勝手している輩も 今日ばかりは落ち着いているので、散歩とさほど変わらない
「おい!トリニティの生徒がゲヘナに何のようだ!?」
辺りに響くほどの怒号が聞こえる
「ん…?」ふと道の脇に目をやると四人のトリニティの生徒が 二人のゲヘナ生に絡まれている、
「私達はこの辺りに穴場のスイーツ店があるって聞いて…」
木の葉のような特徴的なヘイローをした子が言うと
「そんなんどうでもいい!お嬢様なら金持ってるだろ!?」
カツアゲまで…さすがに見過ごせない
「ちょっとあなた」
「あ?なんだよ…ヒュッ……」
「ふ…風紀委員長!?なんで…逃げろぉ!!」
……話を聞く前に逃げてしまった…まぁいいか
「あ、あの…助けてくださりありがとうございます」 先程の生徒がお礼を言ってくる
「気にしないでいいわ、これが仕事だもの」
「すごい速さで逃げていった…」
猫耳の子が困惑している、まぁ無理もないわね
「お礼と言ってはなんですが、一緒に甘いものでも…」
……いやだめだ、今日はおそらく面倒事は無いとは言え、仕事中に……
「実は今日、その店の一周年らしくて…限定のパフェがあるんです」
…まぁたまには息抜きも…いいよね
「…じゃあ、お言葉に甘えさせてもらうわ」
───店内
カラン、と入口のベルが鳴る、なかなか雰囲気の良い店だ テーブル席に案内され席についた
「そういえば名前を聞いてなかったわね、私は空崎ヒナ、ゲヘナの風紀委員長よ」
「風紀委員長…それであのビビリようか…私は杏山カズサ」
「私は柚鳥ナツ、よろしく頼むよ」
「私は伊原木ヨシミ、よろしく」
「私は栗村アイリです…改めてさっきはありがとうございました」
「いいのよ、さっきも言ったけど仕事だから」
「仕事ね〜、でも適度に休まないと駄目だよ〜?激務何じゃないの、 内なるスイーツ欲を押さえれてないからね」
ナツという子が指摘する、正直図星だ…甘いものなどしばらく食べていない
なんでも彼女らはトリニティの放課後スイーツ部といって色んなところで 食べ歩きなどをしているらしい
「まぁさっきも行った通りお礼だからさ、遠慮なく奢らせてよ」
「…そうね、まぁせっかくだしみんなと同じこの限定パフェをもらおうかしら」
なんでもどんなパフェかはわからないらしい、とても楽しみだ
しばらく待ったあと
「はーい、限定パフェ5つです」
件のパフェが目の前に置かれる、パフェは見たところシンプルないちごパフェだが、アイスにかかったイチゴのソースは小さな果肉が入っており、なかなか美味しそうだみんなが目を輝かせている、正直なところ私も我慢できない
「「「「「いただきます」」」」」
そういってまずはいちごのアイスに手を付ける、すると驚いた、口に入れた瞬間
ひんやりとしたアイスの冷たさにイチゴの酸味、そして甘みが口の中に広がる、
果肉が贅沢に入ったソースも相まって口の中がイチゴの香りでいっぱいになる、
下の方にはムースが入っており、味は言わずもがな良く、
アイスとはまた違った温度と食感で最後まで楽しめる
パフェに舌鼓を打っていたのは私だけじゃなかったらしく、カズサちゃんがとても 幸せそうに食べている…あんな顔するのねあの子……
そうこうしているうちにすっかり食べきり、店を出た
「ありがとう、とても楽しい時間だったわ」
「いいんですよ助けてもらいましたし、そうだ、また今度一緒にトリニティの スイーツを食べに行きませんか?」
「…いえ、遠慮しておくわ、立場上あまり時間が取れないの……」
少々名残惜しいがこればっかりは仕方ないだろう
「そうですか……ではまた、機会があったら!」
「ええ……また…」
───風紀委員会
「戻ったわ、アコ」
「あっヒナ委員長!戻ったばかりのところ申し訳ないですが 万魔殿から大量に書類が!」
「ええ、わかったわ、すぐに片付ける」
───その日はスイーツの糖分のおかげか、いつもより早く仕事が終わった